『女性健康の維持メカニズム』その1
男性と女性の健康は維持メカニズムが違います
人は誰でも健康でありたいと思いますよね。
そのためには、自分の健康がどのように維持されているかを知る
ことが大切です。
これまでの医学は、男女を区別せず、同じメカニズムで健康が維持
されていると考えていました。
そして、そのメカニズムの乱れが病気につながるとして、研究が
進められ、医療が発展してきたのです。
しかし、本当にそれでよいのでしょうか。
男性と女性の健康は、その維持メカニズムに違いはないのでしょうか。
その問題について、お話し致します。
1. 男女の寿命の違い
2022年の男女別平均寿命の国際比較を見てみましょう。
日本は男女とも世界で最も寿命が長い国の1つです。
寿命は、医療、住環境、食料需給など多くの面で生存に有利な先進国で長く、
そうしたことが十分でない開発途上国で短い傾向があります。
日本では、男性が81歳、女性が88歳であるのに対し、アフリカのシエラレオネでは、
男性55歳、女性52歳です。
平均寿命は、新たに生まれた赤ちゃんが平均あと何年生きられるか、つまり新生児の平均余命を
意味しますので、赤ちゃんの死亡率が高ければ平均寿命は短くなります。
アフリカの国などの平均寿命が短い国は、こうしたことも影響している可能性があります。
このように平均寿命は国によって様々ですが、不思議なことにどの国でも、
女性が男性より長生きであることがわかります。
戦争がある国では、戦闘に関わる男性の死亡が多くて、男性の平均寿命が短くなる
ということがあると思いますが、日本をはじめ、平和な国でも女性が男性より寿命が
長いことをみると、それだけではなさそうです。
次に日本について、男性、女性の平均余命を見てみましょう。
図にあるように、どの年齢でも女性の方が男性より、平均余命が長いことが分かります。
そして、女性の余命の男性の余命への比を見ると、年齢が高くなるほど、
その比率が高くなる、つまり長生きの度合いが高くなっているのです。
2. かかりやすい病気の男女の違い
病気には男性、女性でかかりやすさに違いがあるものがあります。
急性心筋梗塞や肺がん、胃がん、食道がんなどは男性に多く、慢性関節リウマチや甲状腺疾患、
骨粗しょう症、アルツハイマー病などは女性に多いことが知られています。
また男性には、直ちに命にかかわる病気が多く、女性には生活の質にかかわる病気が多いとされています。
次回に続きます。
現在、医療法人財団順和会山王病院長、国際医療福祉大学産婦人科統括教授、日本産科婦人科学会監事(前理事長)、現場医師として、女性診療、人財育成の最前線に立ち、また厚生労働省の各政策会議、日本学術会議、公的運営会議、学会等の公務に務め、赤ちゃん、お母さん、女性の健康と笑顔に資するべく、業務に取り組んでいます。尚、2020年まで東京大学医学部産婦人科教授として長年、診療、研究、教育を務めて来ました。