『月経の不調(月経痛/月経困難症)への対応』その6
続発性無月経・原発性無月経の治療は?
続発性無月経
・続発性無月経は、健康な女性でもよくある状態です。
そのうち、妊娠・産褥(お産の後)と閉経後の無月経は、
病気ではなく、生理的続発性無月経と言います。
生理的続発性無月経以外の病的続発性無月経のうち、
大半占めるのは、ホルモン異常が原因で排卵が止まった
無排卵性のものです。
・ホルモン性の続発性無月経の多くは、脳の指令系の異常による
中枢性の視床下部下垂体性のものです(83%)。
これに対し、卵巣自体の機能異常が原因のものは少数です(6%)。
・中枢性の無月経の原因として、
過度のダイエットや肥満、ストレス、疲れなどによって、
女性ホルモンのバランスが崩れることが重要です。
稀ですが、下垂体の腫瘍や他の病気が原因のこともあります。
・うつ病などの精神科の病気で用いられる抗うつ薬や睡眠薬、
精神安定剤などが原因で、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)という
ホルモンのレベルが高くなり、その影響で月経が止まることもあります。
・続発性無月経の治療は、原因、年齢、妊娠をすぐに望むかによって
変わってきます。
・初経から間もない思春期の場合は、月経が1年に3-4回あれば、
成長を待って治療するか考えます。
・過度のダイエットや肥満、ストレスがある場合は、
カウンセリングをうけて、心の安定を取り戻すことが大切です。
・妊娠を望む場合は、排卵誘発療法を行いますが、
妊娠を望まない場合は、ホルモン療法で定期的に月経を起こす
治療をします。
・閉経後に更年期障害がある場合は、ホルモン療法や漢方薬を使います。
・下垂体の腫瘍や他の病気が原因の時はその治療を行い、
抗うつ薬や睡眠薬、精神安定剤でプロラクチンレベル(乳汁分泌ホルモン)
が高い場合は、もともとの病気の治療を優先し、
同時にプロラクチンレベルを下げる薬を使います。
・続発性無月経は、なってから治療するより、そうならないようにする
ことが大切です。
・そのために、日頃から基礎体温を記録するなど、自分のホルモン
状態に注意する習慣をつけましょう!
原発性無月経
・原発性無月経の頻度は、0.3~0.4%と非常にまれです。
原因としては染色体異常や腟、子宮といった性器の形の異常など、
難しい原因が潜んでいることが多いです。
・また、日本では15歳までに98%の方が初経を迎えるので、
16歳になっても月経が来ない場合は、病院で検査や治療を
することをお勧めします。
・原発性無月経の原因が、処女膜や膣の閉鎖の場合は手術を行います。
ホルモンの異常の場合はホルモン療法を行います。
・染色体異常の場合は、ご本人だけでなくご家族と一緒に病院に相談
をしましょう!
以上で月経の不調は終わりです。
現在、医療法人財団順和会山王病院長、国際医療福祉大学産婦人科統括教授、日本産科婦人科学会監事(前理事長)、現場医師として、女性診療、人財育成の最前線に立ち、また厚生労働省の各政策会議、日本学術会議、公的運営会議、学会等の公務に務め、赤ちゃん、お母さん、女性の健康と笑顔に資するべく、業務に取り組んでいます。尚、2020年まで東京大学医学部産婦人科教授として長年、診療、研究、教育を務めて来ました。